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突然の未払い賃金請求を受けた会社からの相談
先日、50年以上続く老舗の食品メーカーの二代目社長から相談がありました。
この会社はこれまで社労士と付き合いはなく、労務問題はなかったそうです。
しかしある日、元従業員から未払い賃金の請求があり、社長がとても慌ててらっしゃいました。
【残業問題】掃除や朝礼の時間は勤務時間か?
元従業員からの請求のうち残業時間数については、終業時間後の残業時間だけではなく、始業前の掃除や朝礼の時間も含まれていたそうです。
社長は、夜の残業についてはやむを得ないかもしれないけれど、始業前の時間の分については納得がいきません。
その会社では就業規則上、9時が始業時間であり、9時までの時間についても正当なものとして賃金を支払わなければならないのでしょうか。
元従業員と会社のそれぞれの主張を見た上で、対処法を示します。
元従業員の主張
規則上は9時から勤務なのに、朝礼は8時45分から全員強制参加で行っている。
この時間に仮に遅刻しても減給はなかったが、上司から遅れないようにきつく注意されていた。
また、朝礼前の社内の掃除は当番がそれぞれに割り振られていて掲示されている。
当然やらなければ注意されるし、これは会社からの業務上の指示にあたる。
会社側の主張
朝の清掃は当社の伝統であり創業以来この形で続けてきた。
会社を清潔に保つのは社員として当然の義務であり業務外で行うのが当然。
朝礼も顧客対応や事務作業などの仕事ではなく、社内の伝達事項などを共有する場であり、
社員は参加して当たり前である。これも始業前の準備として業務外で行うものだ。
社労士の見解
この場合は、始業時間前のこれらの活動も労働時間にあたるものと考えられますので、賃金の支払いが必要になります。
残念ながら、「そういうものだ」、「昔からそうやっていた」、「何も問題は起こっていない」、だからよい、ということにはなりません。
どんな時間が賃金を支払わなければならない労働時間になるか、というのは現在は判例上も確立されています。
三菱重工長崎造船所事件(平成12年3月9日最高裁判決)では、労働時間は「使用者の指揮命令下に置かれた」時間かどうかで決まるとされました。
このケースでは掃除を割り振りに反してやらなければ、上司が注意するということですし、朝礼も強制参加であるため、これに遅刻すると注意を受けることになっています。
つまり会社から強制されていて、かつ、行わない場合は制裁(注意等)があるのですから、「使用者の指揮命令下に置かれた」時間であると評価されます。
これらについて、掃除は強制していない、朝礼は自由参加であると主張しても、実態から判断すれば通らないでしょう。
方針としてはこの元従業員との紛争は早期に解決させ、今後同様の事態を発生させないように対処していくことにしました。
この会社がしなければならない対応
何もしないままこの慣習を続けていけば、これからも今いる従業員や辞めた従業員から未払い賃金の請求を受け続ける可能性があり危険です。
例えば1時間あたりの賃金が1,500円の社員であれば、仮に1日30分の未払い残業代であっても、最大で約46万円にもなることがあります(1,500円×1.25×0.5時間×245日/年×2年)。
人数が多ければ多いほど多額になり、50人分で2,300万円になります。
所定労働時間を実態に合わせて変える
毎日9時からは顧客対応が始まり、この時間を変えるわけにはいきません。
社長はこの慣習を続けたいという強い思いがあったので、始業時間を30分早め、終業時間もそれに合わせて30分早めるように就業規則を変えることになりました。
就業規則を変更するには該当条文を変更し、従業員同士で選んだ労働者代表から意見を取り、労働基準監督署に届け出ます。
社労士はこの条文や、意見書雛形を作成し、またこれらの届出まで行うことができるのです。
未払い残業代の請求は他の問題があるから発生する
未払い残業代を請求される多くのケースでは、会社に他の問題がある可能性が非常に高いのです。
ハラスメントや長時間労働、ノルマや評価などについて不満が大きいと退職後に、立証しやすい未払い賃金の請求につながります。
頼れる社労士を味方につけて、労務問題について取り組んでいくことが会社のリスクの低減につながります。
あなたの会社に合った社労士を紹介できますのでお気軽にお問い合わせ下さい。
投稿者プロフィール
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「社労士探しのトライ」運営者の山崎です。
全国で社労士紹介のコーディネーターをしています。
社労士さんについて知らない社長さまも多く、考え方のギャップを 埋めたい!と思い立ちこのブログサイトを立ち上げました。社労士の変更、新しく社労士をつけたい方はぜひご相談ください!
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