今回は近年問題となっている未払い残業代のトラブルについてお話ししたいと思います。
働き方改革により未払い残業問題に目を向けられることが多くなりましたが、まだまだ体制が整っていない会社様が多くあります。
未払い残業により、会社はどれだけの損害を与えられることになったのか?
また未払い残業代のトラブルにより、社労士が事前にできる対策などを挙げてみました。
ぜひご参考ください。
目次
残業代の未払いで約900万円の支払い命令!
下をごらんください。
①被告(会社)は,原告(元従業員)に対し,553万5793円及びうち526万4070円に対する平成29年2月16日から支払済みまで年14.6パーセントの割合による金員を支払え。
②被告(会社)は,原告(元従業員)に対し,320万円及びこれに対する本判決確定の日の翌日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
これは社員が元いた会社を訴えた未払い賃金請求に関する裁判の判決の内容です(アトラス産業事件、東京地裁平成30年9月10日・労判ジャーナル84号52頁)。
①は未払いの残業代とその利息、②は付加金といって、裁判所が「会社が悪い」と判断したため未払い残業代に上乗せされたものとその利息です。
つまり、会社は合わせて約900万円支払わなければならなくなりました。
この種のトラブルは裁判に限らず日常的によく見かけます。
裁判になるのはトラブルのごく一部だけですから、表面化しない残業代のトラブルはどこにでもあります。
未払い残業代が発生しやすいケース!
未払い残業代は、①雇用契約の内容、②労務管理、または③給与計算において何かしらの問題があると起こりやすくなります。
【未払い残業代が起こりやすいケース】
①雇用契約の内容
②労務管理
③給与計算
例えば、この判例の会社でもそうでしたが、
固定残業代を定めている場合には、その内容が適切に定められて、合意されているかどうか(①)労働時間の管理が適切に行われているか(②)、そして給与が正しく計算されているかどうか(③)
という点で問題があると未払い賃金が発生することになります。
「そもそも固定残業代とはどんな仕組み?」
固定残業代の仕組みとは、あらかじめ決めた時間数の時間外労働分の給与を固定的に支払うことです。
通常残業代はその月に発生した時間を集計して、それに応じた手当額を計算して支払いますが、固定残業代の方式を使うと、例えば月に20時間とか30時間とか先に一定の時間数を見込んでおき、その分を固定的に支払うということになります。
通常残業代→その月に応じた残業代を計算して支払う
固定残業代→ある一定の時間数を見込んで固定で支払う
だいたい毎月の時間外の時間数が決まっている場合は、給与計算が楽になるというメリットがあります。
残業代トラブルの元はこんなところから始まる!
下の例をごらんください。
【会社】
月給は40万円で、これには時間外の給料が含まれていると説明しているはずだ。元従業員は契約書にも署名押印しているじゃないか。
【元従業員】
会社からこの契約書に署名押印をして提出するよう求められたため,そうするしかなかった。会社から固定残業代の内容について説明を受けたことなんてない。
これも先程の会社の例ですが、こんなケースがよくあります。
固定残業代を正しく運用するためには、「仕組み自体が正しく作られているか」「そしてその仕組を従業員に説明して理解しているか」どうかが大事なポイントです。
固定残業代は、あらかじめ決められた時間数が何時間なのかわかるようにしておかなければなりませんし、その時間数を超えた場合は追加で残業代を支払わなければなりません。
またあらかじめ決めておく時間数も100時間(過労死レベル)などに設定することはできません。
労働時間をちゃんと管理してこその固定残業代
固定残業代でその決められた時間数を超えた場合、むしろ計算が面倒になります。
正しく運用していないと、給与計算が適切に行われず、未払い残業代が発生するリスクが高くなります。
会社経営において大事なのはこのような労務上のリスクを予防することです。
本業が順調でも労務管理をしっかりしないと高額の賠償金を支払うことにもなりかねません。
顧問の社労士にチェックしてもらうのがベスト!
顧問の社労士がいれば、「固定残業代を使うメリットがあるのかどうか」「使うとしたらどのようにその内容を決めたらよいか」「給与計算を正しくやるためにはどうしたらよいか」についてのアドバイスも受けられます。
何百万円も払うリスクを予防するために、月々数万円の顧問料は決して高くはないでしょう。
投稿者プロフィール
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「社労士探しのトライ」運営者の山崎です。
全国で社労士紹介のコーディネーターをしています。
社労士さんについて知らない社長さまも多く、考え方のギャップを 埋めたい!と思い立ちこのブログサイトを立ち上げました。社労士の変更、新しく社労士をつけたい方はぜひご相談ください!
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