労働事務組合の名前は聞いたことがあるものの、具体的にどのようなサービスをしているのか理解できていない人もいるのではないでしょうか。
もともと会社に勤めていて労災保険に加入している人は関係ないのですが、労災保険に加入できない人にとっては覚えておきたい制度の一つです。
意外と知らない労働事務組合について詳しく説明していきます。
労働事務組合とは?
労働事務組合とは、“事業主の委託を受けて、事業主が行うべき労災保険及び雇用保険の事務処理代行について、厚生労働大臣の認可を受けた中小企業主等の団体のこと”を指します。
一般的に、「事業協同組合」「商工会議所」「商工会」などが事務作業を担う形になります。
会社員には強制的に、保険として労災保険の加入が義務付けられていますよね。
そのため業務中や通勤中に労働者の負傷や疾病、障害、死亡に備えて入ります。でもこの労災に加入できない人たちもいます。
例えば規模の小さな中小企業・家族従事者・法人の役員・親方などは、労働者の扱いにならないので労災に加入できません。
そのためなにかあったときに誰も守ってくれないのです。
労働者に準するものであり、事務処理を労働事務組合に委託することによって、特別加入の制度を受けることができます。
では労働保険事務組合にとってはどんなメリットがあるのかについてですが、
入交付申請書を都道府県労働局長に提出することによって、「報奨金」を受け取ることができます。
常時15人以下の労働者を使用する事業主の委託受け、納付した前年度の「労働保険料の額」に付随します。
2/100に限り厚生労働省の定める額を加えたものになり、上限額は1,000万円程度です。
労働事務組合に事務処理を委託できる事業主には制限があります。
・卸売、サービス 100人以下の規模
・金融、保険、不動産、小売 50人以下の規模
・その他の事業にあっては 300人以下の規模
の事業主として定められています。
いつ何が起こるかわからないからこそ、労災事故や不測の事態に備えて加入する会社が増えています。
労働保険事務組合の歴史
労働保険事務組合の原型になったのは、昭和33年10月の失業保険法の改正によって創設された「失業保険事務組合制度」がきっかけになっています。
当時失業保険は労働者5人未満の事業場は任意適用となり、これが問題となり解決するために、集団加入方式を取り入れる形になりました。
ただし労災保険については、災害発生度の高い建設業や林業などの加入は強制されていましたが、製造業では労働者が5人未満になると災害発生度が少ないとして任意適用となっていました。
ただ年金制度は加入しているものの労災に加入していないと、災害補償が一時的な補償でしかないので大きな格差が出てしまうことになったのです。
その後、労災保険の全面適用になりました。
その後労災保険給付の年金化を目的とした改正に合わせ、昭和40年11月に「労働保険事務組合制度」が創設されます。
その後、「失業保険事務組合」と「労災保険事務組合」の制度が統合され「労働保険事務組合制度」が誕生、昭和50年4月に全面適用の動きとなりました。
保険適用が行政敵手法では困難な零細事業者を中心に、適用促進を理念としています。現在では労働保険事務組合の数は全国で9,500件にもなります。
労働保険事務組合に事務を委託している事業場は、全国で138万3000件を超え約42.5%にもあたります。
労働保険事務組合がいかに重要な役割を担っており、零細事業者にとっては欠かせない制度となっています。
労働事務組合にはどんな仕事を委託できるの?
労働事務組合に事務作業を委託するといっても、会社内の仕事をすべて委託できるわけではありません。
以下の仕事内容のみを委託できるとされています。
(1) 概算保険料、確定保険料などの申告及び納付に関する事務
(2) 保険関係成立届、任意加入の申請、雇用保険の事業所設置届の提出等に関する事務
(3) 労災保険の特別加入の申請等に関する事務
(4) 雇用保険の被保険者に関する届出等の事務
(5) その他労働保険についての申請、届出、報告に関する事務
※厚生労働省の労働保険事務組合制度を引用しました※
などの仕事を労働事務組合に委託できます。
ただし印紙保険料・労災保険・雇用保険などの保険加入に関わる請求の事務は労働事務組合に委託できませんので、ご自身で処理を行うか、もしくは委託することになります。
これらの事務作業を労働事務組合に委託することによって、事務の手間を削減することにもなりますし、事業主の家族従事者なども労災保険に特別加入ができるのです。
また、労働保険料の金額によって変わらず3回にわけて分納できるなどの資金的な負担を削減することにも繋がります。
会社内ですべての事務作業を処理しなければいけなくなってしまうと、時間の負担も大きくなってしまうので、事務作業の見直しにも繋がるのではないでしょうか。
実際に労働保険事務組合の制度を使用している人が多いことも含め、事務作業の簡素化に繋がっているのも納得できます。
労働事務組合に委託するときの手続きはどうするの?
労働事務組合に委託の手続きを行う場合ですが、「労働保険事務委託書」を労働事務組合に提出します。
基本的に地域の範囲的な定めがあるので、労働保険事務組合の主たる事務所がある都道府県に申請を行います。
例外として処理体制等に問題がないと認められた場合のみ、隣接している都道府県にて事務所を持っている事業主が、全体の20%以内であれば認められるケースもあります。
このときに団体に入会するお金や委託手数料がかかる場合がありますので、事前に確認しておくのをおすすめします。
手続きは自身で労働保険事務組合に手続きを行うこともあれば、社労士に依頼して申請を代行することもあります。
労働保険事務組合は、本来労災に加入できない事業主や役員・家族従事者なども労災保険に特別に加入できるようになる制度です。
そのためには所定の手続きも必要になりますし、事務作業の委託などもあります。
負担の大きな事務作業を委託できるメリットも大きく、万が一のときに備えることもできるので労働保険事務組合に加入するメリットも大きいといえるでしょう。
投稿者プロフィール
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「社労士探しのトライ」運営者の山崎です。
全国で社労士紹介のコーディネーターをしています。
社労士さんについて知らない社長さまも多く、考え方のギャップを 埋めたい!と思い立ちこのブログサイトを立ち上げました。社労士の変更、新しく社労士をつけたい方はぜひご相談ください!
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